なぜ相続登記だけ義務化されたの?【後編】所有者不明土地問題から考える
前編では、
「そもそも不動産の権利に関する登記は原則として任意なのに、なぜ相続登記は義務になったのか?」
という疑問についてお話ししました。
今回は、その理由をもう少し掘り下げてみます。
大きな理由は「所有者不明土地」の問題
相続登記が義務化された大きな背景には、所有者不明土地の増加があります。
所有者不明土地とは、簡単に言えば、
「登記簿を見ても誰が所有者なのか分からない」
または、「所有者は分かっても、その所在が分からず連絡が取れない」といった土地です。
国土交通省の資料では、所有者不明土地の発生原因の約3分の2が、相続登記の未了によるものとされています。(moj.go.jp)
なぜ所有者不明になると困るのか?
例えば、道路を整備するために土地を取得したい。
ところが、その土地の登記名義人は何十年も前に亡くなっている。
その後、相続登記もされていない。「では、現在の相続人は誰なのか?」と調べていくと、何人もの相続人が関係している。
中には、「どこに住んでいるか分からない」「海外にいる」
「連絡がつかない」という人もいるかもしれません。
こうなると、土地を利用したくても話が進みません。
個人の土地だから本人だけが困る、という話ではなく、社会全体に影響する問題になってきます。

「売るつもりがないから登記しない」が積み重なった
これまで相続登記をしない人の中には、
「売るつもりはない」「自分が住んでいるから問題ない」
「価値のない土地だから登記する必要がない」という方もいました。
一人ひとりにとっては、それほど不合理な判断ではありません。
ところが、それが何十年も積み重なると、「所有者が分からない土地が増えてしまう」
という社会問題になります。
そこで国は、これまで任意だった相続登記について、申請を義務化する方向へ制度を変更しました。
だから「相続登記だけ」が義務になった
ここまで整理すると、なぜ相続登記が義務になったのかが分かります。
不動産登記そのものをすべて義務化したわけではありません。
相続によって所有者が変わったにもかかわらず、そのまま放置されることで、所有者不明土地の発生につながる。
そのため、
「相続で不動産を取得した人には、名義を変更するための申請をしてもらおう」
という制度になったわけです。
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記を申請することが義務となりました。(moj.go.jp)
だからといって、必要以上に慌てる必要はありません
ここは、奈良で相続した実家について相談を受けている私から、特にお伝えしたいところです。
「相続登記が義務になった」と聞くと、「早く売らないといけない」
「今すぐ司法書士に行かないといけない」「相続した家を急いで処分しないといけない」
と思ってしまう方もいます。
しかし、相続登記の義務と、不動産を売却するかどうかは別の話です。
売る必要がなければ、売る必要はありません。住み続けるなら、その選択もあります。
家族で話し合う時間が必要なら、まず整理することから始めてもいい。
ただし、制度上の期限はありますので、何年も放置するのではなく、早めに状況を確認しておくことは大切です。
「相続人申告登記」という選択肢もある
遺産分割の話し合いがまとまらず、すぐに相続登記をすることが難しい場合には、相続人申告登記という制度もあります。
これは、相続人であることを申告することで、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度です。(moj.go.jp)
ただし、これは相続登記そのものではありません。
その後、遺産分割がまとまった場合には、その内容に応じた相続登記が必要になります。
また、売却する場合には、原則として相続登記を済ませる必要があります。
制度を知れば、必要以上に怖がる必要はない
相続登記の義務化について、
「登記しないと罰金」
という部分だけを見ると、不安になるかもしれません。
でも、その背景には、
「所有者が分からない不動産をこれ以上増やさない」という目的があります。
そう考えると、「国に急かされている」というより、
「自分が相続した不動産の名義を整理しておくための制度」
と考えたほうが分かりやすいのではないでしょうか。
奈良の実家、何から始めればいいか分からない方へ

相続した実家について、
「登記がまだなんです」
「兄弟で話がまとまっていません」
「売るかどうかも決めていません」
そんな状態でも大丈夫です。
相続登記そのものは司法書士などの専門家に相談することになりますが、奥居不動産事務所では、相続した不動産についての最初の相談窓口として、必要に応じて司法書士につなぎ、相続関係の整理から不動産の売却までワンストップでサポートしています。
26年間、不動産の仕事をしてきて思うのは、
「分からないから、そのままになっている」という方が本当に多いということです。
だからこそ、いきなり「売る・売らない」を決める必要はありません。
まずは、「この家、これからどうしたらいいですか?」からで大丈夫です。
相続登記は義務になりました。
でも、必要以上に慌てる必要はありません。
制度を知って、現在の状況を整理して、一つずつ進めていけば大丈夫です。
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